ニューズレター38号 (2025冬号)

ニューズレター38号 2025冬号


1.巻頭言・第20回(2025)大会長学会運営印象記

日本EMDR学会理事長 兵庫教育大学
市井 雅哉(いちい まさや)

 2025年7月19日(土)の第20回学術大会「「これまで」と「これから」」、続く20、21日の継続研修「摂食障害へのEMDR」を立命館大学の中原由望子先生のご協力のもと立命館大学大阪いばらきキャンパスで開催させて頂きました。ご参加頂いた会員のみなさまに厚く御礼申し上げます。
 ご存知のように本学会の大会は東と西で交代で開催しておりますので、隔年で大会の企画や運営が回ってくる形です。これのメリットは、ノウハウが蓄積されていて、ゼロベースから考えることはほぼありません。さまざまな計画、文書、会計などが一昨年はどうしたっけ?という参照枠があるので効率的に進みます。一方、デメリットは、メンバーに飽きや疲れや慢心が見られることです。しかし、今回、西のメンバーには新理事(大塚先生、久冨先生、南川先生、森先生、松本先生)や、大阪医科薬科大学の先生方(上田先生、川端先生、若林先生、再来年の下見も兼ねて)にも加わって頂き、また、素晴らしい会場を中原先生にご提供頂き、そういう意味では大変新しい気持ちで取り組むことができました。古参メンバー(天野先生、海野先生、市井)のスキルと新しい息吹の融合という感じでしょうか。

 まして、20回という記念大会です。いろいろと欲張った大会長講演では、熊野宏昭先生やAndrew Leeds先生にもビデオ登壇頂き、私自身のEMDRとの出会いから、1995年の阪神淡路大震災の年のEMD実践、シャピロとの出会い、1996年の最初の東大で行われたトレーニングから、2005年の第1回大会、また、日本人のみでのトレーニングの開始、学術雑誌の刊行、NHKの報道の影響、研究の進展までを紹介しました。シンポジウム1では、若手の研究者の先生も交えて、作用メカニズムについての研究、シンポジウム2では、雑誌こころの臨床アラカルト「トラウマ治療の新常識」の座談会(2008年)メンバーのその後の展開をお聞きする機会を得ました。その他一般演題にも大変興味深い内容で、盛んな議論が行われました。
 継続研修の摂食障害のEMDRも、愛着や解離への考察も含め、防衛の扱い方、EMDの活用など、目からウロコの知見、体験がありました。

 さて、いよいよ私の兵庫教育大学での最後の1年も半分が過ぎました。おかげさまで、一般社団法人化、事務局移転の準備、ホームページのリニューアルなどは順調に進んでいます。ご尽力頂いている理事の先生方には感謝申し上げます。
 一般社団法人が設立されるとすぐに選挙で新しい理事体制に移行しますが、それも含めて、今、本学会の大きなテーマが“世代交代”です。新入会員、新理事、新臨床家、新コンサルタント、新ファシリテーター、新トレーナーの活躍に期待しています。

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2.一般社団法人日本EMDR学会設立にあたって

カウンセリングルームセコイア
檜原 広大(ひばら ひろお)

 このたび「日本EMDR学会」は、2025年7月31日付で一般社団法人として新たな一歩を踏み出しました。1998年に任意団体として発足して以来、20年以上にわたり、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)の普及・発展に取り組んできましたが、法人格を取得することにより、学会の社会的責任と透明性を一層高め、持続的な活動基盤を整えることができました。これはひとえに、長年にわたる会員の皆さまのご支援とご尽力の賜物です。心より感謝申し上げます。

 法人化の目的は、大きく三つあります。
第一に、学会活動の安定と継続性の確保です。法人格を持つことで、会計・契約・対外的な交渉において信頼性が高まり、研究助成や委託事業、国際的な連携も一層推進可能となります。
第二に、学術的な公益性の明確化です。EMDRはPTSDをはじめとする幅広い臨床領域で効果が検証されており、近年は教育、司法、災害支援など多様な分野への応用も注目されています。法人化により、学術的成果を広く社会に還元する責務を担うことになります。
第三に、ガバナンスの強化です。定款・選挙規程・倫理規程を整備し、会員の意思を反映する民主的な運営体制を構築しました。

 設立に至るまでの道のりは決して容易ではありませんでした。司法書士・公証人との調整や理事改選の準備、電子投票制度の導入など、学会の歴史上初めての課題に直面しました。しかし、設立準備委員会と理事会が協働し、会員の皆さまのご意見とご支援に支えられながら、一つひとつの課題を乗り越えてまいりました。この過程自体が、学会の成熟と結束を象徴していると感じています。

 また、法人化に伴い、学会の事務業務の一部を外部事業者へ委託し、運営体制の効率化と安定化を進めています。これにより、会員対応や大会・研修運営、選挙管理などをより円滑かつ継続的に行える体制を整備中です。加えて、学会ホームページの全面的なリニューアルも進行中であり、会員向け情報の整理やオンライン手続き機能の拡充、外部への発信力強化を目指しています。これらの取り組みは、法人化後の学会運営を支える重要な基盤となるものです。

 今後、法人化を契機として「臨床の質の向上」「研究の発展」「社会貢献」の三本柱をさらに推進していきます。研修体系とスーパービジョン制度の充実、国内外の研究交流とエビデンスの蓄積、災害支援や行政・教育現場との連携などを通じ、EMDRが社会の中で果たしうる役割を広げていくことを目指します。

 EMDRは単なる技法ではなく、トラウマからの回復を支える包括的な臨床的パラダイムです。複雑性PTSDや依存症、対人関係の困難など、多様な苦悩に寄り添うためには、臨床家一人ひとりの学びと、学会全体の共同体としての成熟が求められます。法人化はそのための新しい「器」であり、ここから学会は次の段階へと歩みを進めます。

 現在、代議員選挙および理事選挙を控えており、新理事会が発足した後、一般社団法人日本EMDR学会は本格的に始動いたします。私自身は、設立時理事として法人化のスタートに関わりましたが、今後は新理事会を中心に、会員の皆さまとともに学会の未来を築いていくことを心より期待しています。

 最後に、長年にわたり学会を支えてくださった会員の皆さまに改めて感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援・ご協力をお願い申し上げます。

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3.新しいテキストの変更ポイントについて

兵庫教育大学 
市井 雅哉(いちい まさや)

 Weekend 1、Weekend 2トレーニングが刷新されました。W1の方は、2024年11月から、W2の方は2025年の8月から使用が開始されました。大きな改訂のポイントについて記します。

Weekend 1:

  1. 歪みが見られる臨床テーマについて「責任」「安全」「コントロール」の3つに新たに「つながり」が加わりました。
    「引きこもり」が深刻な問題となっている日本においては、大変重要なテーマと思います。愛着の問題、いじめによる孤立、性的マイノリティなど、つながりが感じられない、自分は一人ぼっち、どこにも属せない、透明な存在、など
  2. 過去‐現在‐未来の3分岐が図示され、わかりやすくなりました。
    過去を処理した後に、現在の引き金に移行しますが、未来の鋳型は現在の引き金と対応する形です(図参照)。
  3. 第4段階 脱感作段階の手続きで、毎回のBLSの後に、「深呼吸」→「解放して、一息ついて」に変わりました。この件は、MLでもお話しています。
  4. 第5段階 植え付けの手続きで、「毎回VOCのみを聞く」が変わり、脱感作段階のように「今、何がありますか?」を聞くようになりました。VOCは適宜聞く感じになっています。

Weekend 2:

  1. 複雑な臨床像の見立て(事例概念化)がわかりやすくすっきりしました。
  2. EMD〜EMDRの連続体という考え方が導入され、焦点化再処理と完全な再処理というグラデーションが明確に示されました。
  3. 認知の編み込みがわかりやすく整理されました。
  4. うつに対するプロトコルDeprEndが追加されました(講義では十分の時間は割けませんが、付録に詳述あり、ただし英語)。

 6つのステップの中には、ステップ4:否定的信念システムを再処理、ステップ5:抑うつ状態と自殺状態を再処理が含まれています。

 新しいテキストは英語版(白黒版=2,000円税込み)、日本語版(カラー版=4,000円税込み)とも学会事務局で購入可能(送料は別途必要)です。

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4.第20回(2025)大会副大会長大会運営印象記

第20回学術大会大会副会長
社会福祉法人清章福祉会 清住園
天野 玉記(あまの たまき)

 第20回学術大会が立命館大学大阪いばらきキャンパスで、2025年7月19日に開催され、学術大会副会長を務めさせていただきました。今回は、第20回大会に相応しい大会にしたいと準備委員会の会議を12回も開いて入念に準備をさせて頂きました。お陰様で初めての会場でしたが、200名を超える皆様にご参加を頂き、学術大会・継続研修を成功裏に終えることができましたことを改めて感謝申し上げます。

 私は、2016年の第11回を皮切りに15回、16回、18回の学術大会・継続研修に副大会長として会計・会場係などの裏方として深く関わらせて頂きました。しかし、会場代が高くて大きな会場を用意できず「先着順何名様まで」という形で申し込みを締め切らせて頂くなど、大変心苦しい思いをしてきました。学術大会後のアンケートにも「もっと広い会場でゆったりと学会を開催して欲しい」など、会場への不満のコメントが多くあり、皆様のニーズにお応えしたいと長年思い続けておりました。そのような思いの中、本大会では立命館大学の中原由望子先生のご配慮で「立命館大学いばらきキャンパス」という素晴らしい会場をお借りすることができ、第20回という記念大会にふさわしい会場を準備することができたことが何よりも素晴らしく、ありがたいことでした。これも偏に中原先生をはじめ立命館大学をお借りするにあたりご尽力くださった準備委員会の皆様、立命館大学の教職員および学生の皆様に心から感謝申し上げます。

 本大会は、第20回大会という節目の記念大会として大会テーマを「『これまで』と『これから』」とし、対面形式にて開催されました。まず、市井雅哉理事長が大会長として「EMDRと歩んだ日々:『これまで』と『これから』」というテーマで講演されました。1991年の東京での勉強会から黎明期を経て現在まで、海外・日本を問わず多数の先生方にお世話になり、現在会員1,249名(うち医師が26.5%で、臨床心理士が68.4%)までに大きく成長したことが分かる講演で、大変感銘を受けました。また、同様にシンポジュウム2でも、大河原美以(大河原美以心理療法研究室)、杉山登志郎(福井大学)、仁木啓介(ニキハーティーホスピタル)の3名の先生方から学会発足当時から現在まで独自の工夫をこらしながら、臨床に適用させ、研究や普及をリードされてご活躍されてきた軌跡と、臨床へのエネルギーをお聞かせいただき、日本EMDR学会の歩みはゆっくりでしたが確実に結実して現在があるのだと実感させて頂きました。

 また、私が企画させて頂きましたシンポジウム1の「EMDRの治療メカニズム解明に向けて」は、EMDRの治療メカニズム解明に世界中の多くの方々が参画され進められていますが、その中でも日本での最新の研究は目覚ましく、甲南大学の前田多章先生との共同研究がここ数年で実を結びつつあります。「ブラックボックスのようなEMDRだ」と揶揄されたEMDRの治療メカニズムがここまで解明されてきたことに20年という重みを感じるものでした。
本大会は、心的外傷への関心の高まりもあってEMDRの人気は留まるところを知らない現状のなか、次世代へとさまざまな遺産を継承していく時期を迎えていることが分かるとても有意義な学術大会で、今後のEMDR学会の発展につながる光明が差し込んだ記念すべき大会だったと思います。

 最後に、EMDR学会事務局の小池さん、G-ONE株式会社の須田さん、スタッフの皆様にも大変感謝致しております。ありがとうございました。

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5.第20回(2025)大会参加印象記

鷹ノ巣クリニック
溝口 碧(みぞぐち あお)

 第20回大会参加印象記をまとめるにあたって、改めて学術大会の抄録集と自分の拙いメモを読み返しながら当日のことを思い返しています。私自身、2025年3月にEMDRWeekend1トレーニングを修了した初学者であり、今大会はEMDR学会員として初めての参加でした。新幹線の到着時刻を見誤り、会場に遅れて到着するというハプニングがありましたが、過去2回非会員として参加した時よりも事例の見え方、理解の深まり方が変わっていたように思います。とは言うものの、初学者の身としては、発表の内容を受け止めることに精いっぱいで、この印象記も考察というよりも感想にとどまっていますが、ご容赦ください。

 午前中の一般演題では、多岐にわたるテーマの中からどの発表を聴くか非常に迷いましたが、「ポジティブ記憶を用いてトラウマ処理をするフラッシュテクニックの臨床実践」と「回避・制限性食物摂取症をきたした自閉スペクトラム症児へのEMDR」の2講演を選択しました。

 前者では、フラッシュテクニックという初めて耳にした治療技法に興味があり、強い苦痛を避けながら治療できるという点に魅力を感じました。症状の背景にトラウマ体験が存在するクライエントでも、様々な理由からEMDRの実施を見送らざるをえない場合もあります。フラッシュテクニックが、彼らの一助になるかもしれないと期待を感じました。

 後者では、継続研修のテーマに近しいため選びましたが、神経発達症の児童に対する実践を通して“トラウマ”という視点で食をめぐる症状をとらえる大切さを学ばせていただきました。子どものクライエントの場合、創意工夫がより求められると思いますが、認知の編み込みとして「喉は滑り台で、食材は滑り落ちていく」という言葉が印象に残っています。セラピーにあたっては、柔軟性と発想力、ユーモラスさも忘れずにいたいと思いました。

 午後の教育講演では、守秘義務について法律の観点から重要なポイントを田邉昇先生が解説してくださりました。日々の臨床の中では、当然のことだからこそ意識がぼやけてしまっているかもしれないと自省し、「心理士(師)」という名を背負う立場として気を引き締めていこうと改めて感じました。

 続く2つのシンポジウムは、いずれの講演も興味深く、多くの刺激を受けました。「EMDRの治療の解明に向けて」では、眼球運動のもたらす効果や作用機序について最新の研究結果とともにご紹介いただきました。Weekend1トレーニング修了の立場としては、眼球運動を促す際の指を振るスピードや距離にまつわる具体的な指針を得ることができたのは大きな収穫でした。「EMDRがもたらすもの:『これまで』と『これから』」では、杉山登志郎先生、仁木啓介先生、大河原美以先生が、各々の臨床での実践や課題についてお話しくださいました。複雑性トラウマを抱える方、解離性同一性障害の方など、複雑な事例の治療例をうかがう中で、自我状態の理解と介入についても知識とスキルを身に着ける必要性を感じました。クライエントが“今を生きる”ことを支援すること、その積み重ねが次の世代にも良い影響を与えていくことにつながります。EMDRを通して、今出会えるクライエントと真摯に向き合いながらトラウマ治療をおこなえるセラピストになろうと改めて奮起する機会をいただきました。引き続き学術大会や研修に参加しながら、自身の知識やスキル向上に取り組んでいきたいと思います。

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6.第20回(2025)継続研修参加印象記
-摂食障害に対するEMDR治療研修に参加して-

こころのクリニック日立/ セラピールーム・ゴーシュ
岩月 肇(いわつき はじめ)

 2025年7月20日・21日の二日間、学術大会に引き続き、立命館大学で開催された「摂食障害(ED)に対するEMDR治療研修」に参加しました。講師はスペインから来日されたナターリア・セイジョ先生です。ナターリア先生いわく、「摂食障害の研修は世界的に見ても、あまり人気がないのです」とのこと。実際、私自身も「今年のテーマはEDか…参考程度になれば」と、やや距離を感じながらの参加でした。しかし、そのような先入観を持っていたことが恥ずかしくなるほど、素晴らしい研修内容でした。摂食障害の治療にとどまらず、トラウマ臨床、さらには精神科全般の臨床家にとって、多くの学びと気づきを与えてくれる内容でした。

 EDの治療法としては、主に行動変容を目指す認知行動療法(CBT-E)が主流です。短期間での集中的な食行動改善は確かに効果的ですが、行動修正ができて食行動が安定しても、背後にある不全感や孤独、抑うつがイベントをきっかけに再燃しやすく、トラウマや愛着問題の心理治療を並行して行ってもいました。しかし、摂食障害のクライエントさんとの心理治療は、セッションが進みにくいことも少なくありません。過去の記憶にアクセスしようとしてもブロックされていたり、問題を「なかったこと」のように振る舞うケースや、治療関係の構築そのものが難航することも少なくありません。ED治療の難しさを感じてきました。

 「何がセッションを難しくしているのか?」――クライエントの「治療抵抗」という言葉の中で、セラピストが隠し持ってきたセラピスト自身の防衛を外すことから始めることが重要になります。つまり、それはクライエント自身が長年の苦しみの中で築き上げた防衛システムなのだという視点を、ナターリア先生は強調されました。この視点が、今回の研修で私がもっとも深く学んだことでした。

 摂食障害を抱えるクライエントは、否認、忠誠心、自責など、さまざまな防衛の形で真の問題が表面化しないようにしています。その背後には、家族関係の問題、愛着の傷、孤立の恐怖や恥で埋められたトラウマ、そしてもっとも治療を難しくする「解離」の問題が隠れています。そして多くのケースで、二次の構造的解離が見られ、さまざまな自我状態が無意識の中で本人を守ろうとしています。そのため、セラピストに見える部分は、ほんの「氷山の一角」にすぎません。研修では、解離の仕組みや防衛の具体例を、ナターリア先生の豊富なケース紹介を通じて学ぶことができました。解離による防衛は、クライエント自身も気づいていません。だからこそ、それが治療のテーマとして上がってくることもありません。セラピストは、その防衛に気づき、それを少しずつ外しながら、最後には分断された自我状態を統合できるように支援していく必要があります。

 そのプロセスは、クライエントがこれまで自分を守ってきた「バラバラの自分たち」に、深い愛情を向けていく旅でもあります。セラピストは、クライエントが「今のままの自分でいていい」と感じられるような安心感の中で、統合へと向かうプロセスを支える存在であるべきなのだと学びました。

 「摂食障害の治療」とは、単に食行動のコントロールを取り戻すことではなく、人生をかけて築かれた防衛の物語に寄り添い、クライエントが“本当の自分”として生きていけるよう支えるプロセスなのだと、深く実感しました。そして、これは解離による防衛といった、最も治療を難しくしていく問題への真摯なチャレンジでもあります。このような素晴らしい技法を、たくさんのクライエントと向き合いながら作り続けてこられたナターリア先生と、そのEMDRコミュニティーに深く感謝いたします。

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7.EMDR Europe(2025.5.30-6.1)参加印象記
-EMDR Europe Research & Practice Conferenceに参加して-

兵庫県こころのケアセンター
柿木 慎吾(かきぎ しんご)

 2025年5月30日から6月1日にかけて、プラハで開催されたEMDR Europe Research & Practice Conferenceに参加しました。私にとって初めての国際学会であり、かねてより訪れてみたいと思っていた憧れの地プラハで迎えられたことは、まさしく感無量でした。
 1日目のワークショップは予算の都合で参加できなかったため、発表の練習をしたり、会場周辺を散策したりして過ごしました。初めて訪れるプラハの街並みは想像以上に美しく、学会への期待が一層高まっていきました。

 2日目はいよいよ発表当日です。直前の休憩時間には全然人がいなかったにも関わらず、いざ始まってみれば立ち見が出るほどの満席状態で一気に緊張感が高まります。それと同時に、日本ではまず見ることのないであろう目の前の光景に、胸の奥から喜びが込み上げてきました。肝心の発表に関しては、カンペを見てなんとかこなすものの、英語での質疑はChatGPTによる練習もむなしく、市井先生に手助けしていただく形となりました。今回一番の反省点です。それでも発表後には、Andrew Leeds先生やMarilyn Luber先生をはじめ、多くの先生から声をかけていただき、私たちの研究が国際的に見ても意義のあるものであったことを実感しました。私たちの発表の直後には、なんとスペインの研究者らが「眼球運動はあってもなくても一緒だ!」という趣旨の発表をしており、会場全体が一瞬ピリッとした緊張感に包まれ、活発な議論が交わされました。今後、彼らの研究を追試しつつ、私たちの研究もさらに発展させていく必要があるなと強く感じました。ちなみにこの日の夕食は、日本でもワークショップをされたことのあるKarsten Böhm先生に教えていただいたチェコ料理店で舌鼓を打ったのでした。

 3日目は、緊張感からの解放と疲労ですっかり気が抜けており、記憶もかなり朧げではあるのですが、閉会セレモニーがとても感動的であり、「あぁ、ついに終わってしまった」と思ったことは鮮明に覚えています。コーヒーブレイク中には、前日の発表を聞きに来てくださった先生方から声をかけていただきました。私は英語ができない怖さがありながらも、十分な時間が確保され、軽食を片手に交流できるこのコーヒーブレイクの雰囲気がとても気に入りました。次に参加するときは積極的に議論に加われるよう、英語の勉強を頑張ることを心に誓うのでした。さて、大会も無事終わり、この日の夕食は、旧市街にあるチェコ料理店で、素敵なオルガンの生演奏を楽しみながら憩いのひと時を過ごしました。その後のナイトクルーズでは、チェコの美しい街並みを存分に堪能しました。翌日は丸一日観光し、その次の日にチェコを発ちました。帰国した現在、オンデマンド配信を必死に見返している最中です。

 次の学術大会は、2027年にスイスのローザンヌで開催されるそうです。今回の感動を再び味わえるよう、これからも研究を続け(英語の勉強もしっかり頑張って!)、また現地で発表できるように今から準備していきたいなと思いました。もちろん一緒に発表してくださる方がいらっしゃると、とても心強いです。海外での発表経験がない方も、ぜひ一緒にチャレンジしてみませんか?

 最後に、海外経験の全くない私を支えて下さった研究室メンバーの南川華奈さん、山内美穂さん、そして指導教員の市井雅哉先生に感謝申し上げます。

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8.トレーニング参加印象記Weekend1(2024.11.22-24)
-EMDR Weekend 1 in 新潟 参加印象記-

新潟県立吉田病院 小児科
牧野 仁(まきの ひとし)

 私は新潟県燕市の総合病院で、小児科医として子どものこころの診療に携わっています。心身症や発達障害の診療が中心ですが、最近はトラウマの視点が必要なケースも増えてきました。児童精神科医が少ない地域では、小児科医もトラウマに向き合う必要があり、精神科系の講演会に参加したり、知り合いの心理士から学びながら理解を深めようとしていたところ、児童精神科医で日本EMDR学会治療者の杉本篤言先生に声をかけていただき、2024年11月のEMDR Weekend 1 in 新潟に参加する機会を得ました。

 参加前はEMDRという技法に対して、「指を振ってトラウマが治る便利な治療」ぐらいのイメージしかありませんでしたが、講義を通じて、治療には安全な状態を作る準備やターゲットアセスメントなどのステップが重要であることを学びました。実習ではセラピスト役として治療の流れを体験し、習得することが主たる目的だったのですが、私が衝撃を受けたのはクライエント役として両側性刺激を受けたときの感覚でした。実習用に即席で“適当に”選んだ記憶を再処理してもらったところ、予想外の過去の記憶や感覚が次々と湧き上がり、「えっ、その記憶が出てくるの?」というような不思議な体験となり、耐性の窓を超える瞬間もありました。その結果、原家族へのわだかまりや悩みが整理される感覚を得ることができました。

 講義では「処理はセッション後も続く」とありましたが、実習から約1年経った今も、原家族との関係が良い方向に進み続けている実感があります。特に、認知症で要介護状態だった母への葛藤が和らぎ、家族で協力しながら楽しく支えられるようになりました。母の良い面にも気づけるようになり、家族関係が大きく改善しました。EMDRを経験しなくても変化は起こり得たかもしれませんが、私にとってはEMDRの影響が大きかったと感じています。

 ただ、実際に実臨床の場で、テキストに噛り付きながら、セラピストとして自分のクライエントさんにEMDRを行ってみましたが、やるべき工程が抜けてしまったり、かと思えば余計な工程をしてしまったりと、情けない状態です。クライエントさんは、「実験台になって、いい迷惑だわ」などと内心思っているのかも知れませんね。しかし、つぎはぎ状態のボロボロEMDRでも、ちょっとずつやることで、最初の頃よりクライエントさんの心理状態が良くなっているような気がしており、効果を少しずつ実感しております。

 最近、Weekend 2にも参加し、EMDRの奥深さと難しさを改めて認識しました。それでもやはり、原点であるWeekend 1で初めて感じたクライエント役での実体験は物凄いものであり、そのインパクトを忘れず、日々の臨床でEMDRを活用し、クライエントさんの悩みの改善に貢献できればと思います。EMDRを施行する際には、1回の治療につき、最低でも1時間以上のしっかりとした時間を準備する必要があり、外来時間の調整なども簡単ではないのですが、それでも行う価値のある治療です。使わなければ技術も錆びてしまいますので、必要な場面では積極的に勧めていきたいです。

 最後に、Weekend 1 in 新潟でご指導くださった講師の先生方、スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

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9.トレーニング参加印象記Weekend2(2024.10.4-6) 
-EMDR研修 Weekend 2 (2025.8.8-10東京)を受講して-

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 行動科学研究部門
長峯 正典(ながみね まさのり)

 この度、トレーニング参加印象記Weekend 2を投稿する機会をいただきました、防衛医大の長峯と申します。最初に簡単に自己紹介をさせていただきます。

 私は防衛医大を卒業後、陸上自衛隊の精神科医官として勤務している現職の自衛官です。この10年程は防衛医学研究センターという研究機関に所属し、自衛隊員のメンタルヘルスに関する研究や教育を主たる任務としつつ、細々と精神科臨床にも従事しています。みなさんご承知の通り、現在トラウマ焦点化心理療法がPTSDの第一選択治療として位置付けられていますが、これらの治療を保険診療で提供している医療機関はほとんどないのが実状です。有事や大規模災害への対処が求められる自衛隊の医官として、まずは自ら第一選択治療を提供できるようになりたいという思いで2024年11月にWeekend 1を、そして今回Weekend 2を受講した次第です。
 
 Weekend 1ではAIPモデルや8つの段階について教わり、EMDRの全体像がある程度分かった気になっていたので、以前から目をつけていた外勤先の外来患者さんにさっそく治療を開始しました。早々に直面したのが診療予約枠を確保することの難しさでした。私の外来診療は1時間に8名まで患者予約が入れられる設定になっていたため、毎週1回の治療において60分の予約枠を確保するのにかなり苦労しました。Weekend 1を終えた段階では治療可能な患者に制約があることは聞いてはいましたが、安易に考えていた私は無謀にも複雑性PTSDの患者に治療を開始してしまったのです。Weekend 1後のコンサルテーションにおいて早々にそのことを指摘され、一旦治療を中止せざるを得なくなり、患者に対して丁重に謝罪した上でしばらく治療を待ってもらうことになりました。仕方なく治療適応のありそうな別の患者さんを探していたところ、外勤先の病院長から1時間枠を使用する特別な治療を禁じられてしまい、不幸にも実践経験を積むことができない状態となりました。

 その後、大学病院においてEMDRを実施できる環境を整備することができましたが、そうした中でのWeekend 2だったので、「これでようやく複雑性PTSDの患者さんへの治療を再開できる」と少しはやった気持ちで臨みました。振り返って感じることは、Weekend 1はEMDRを実践するための最低限の技能を修得するための講習で、実際の臨床で直面する様々な困難な場面への対処にまでは踏み込めていなかったということです。こうした気付きはEMDRを実践して初めて感じることなので、そういった意味でEMDR講習が2回に分けて実施される構成は理にかなっていると思いました。また、Weekend 2で特に私の印象に残ったのは、記憶の処理が停滞した際の認知の編み込みでした。実習中もそうでしたが、その後の臨床実践においても、認知の編み込みは記憶の処理を前進させるのに極めて有効な手法だと強く感じると同時に、これはまさにCPTの中核的要素である認知再構成であると思いました。EMDRは単に両側刺激を用いた脱感作と再処理の技法だけでなく、認知再構成や暴露的な想起といった複数の治療構成要素で構成される、総合的なトラウマ治療法であると改めて実感しました。

 以上、簡単にWeekend 2を受講しての雑感を述べさせていただきました。今後、EMDRの実践を積み重ね、防衛医大病院において保険診療として実装できるよう努めていきたいと思います。また、EMDR講習の開催にご尽力いただいている先生方に、この場を借りて改めて御礼申し上げたいと思います。

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10.トレーニング参加印象記Weekend1再受講
-基本に立ち返り、あらためてEMDRと向き合う-

カウンセリングルームあかり・(一社)長野トラウマケアセンター
上平 加奈子(うえひら かなこ)

 私がEMDRと出会ったのは2016年。カウンセリングルームでの臨床において、言葉によるアプローチだけでは届かない領域に直面することが増えていた頃でした。特に、過去の体験が現在の感情や行動に強く影響しているケースでは、認知的な整理だけでは限界を感じることもありました。そのような中、「え?眼球運動でトラウマが?」と半信半疑の中、EMDRトレーニングを受講したのを思い出します。

 2025年3月14~16日、神戸にて約9年ぶりにEMDRのトレーニングを再受講する機会をいただきました。午前中のみの3日間という限られた時間ではありましたが、実際に臨床でEMDRを実施してきたからこそ得られる実感や、当時は気づけなかった新たな発見が多くありました。午後の実習は新規受講の方のみが対象で、私たち再受講者は参加できなかったのが少し残念でした。実際の手順を改めて体験しながら確認したかったという思いもあり、機会があればぜひ実習にも参加したいと感じています。

 再受講では、まずテキストが大きく改訂されており(私が持っていたのは赤いテキスト)、構成も整理されていて非常に分かりやすくなっていました。EMDRの実施手続きにも細かな変更があり、より実践的で柔軟な対応が可能になっている印象を受けました。その分テキストの情報量も多くなっていたので、「市井先生のお話は3日で終わるの!?」という心配もしつつ、なんとか3日でおさまり、私もアップデートができました。

 これまでの臨床では、ある程度の感覚で調整していた部分もありましたが、今回の講義では、自分の対応を振り返る良い機会となりました。

 今回の再受講を通じて、EMDRの基本を改めて確認しながら、日々の臨床に活かすための視点や工夫を深めることができました。また、ニューズレターのお話をいただいたことで、「そうだった、基本に戻ろう」と、またテキストを見返すきっかけにもなり、振り返りの時間を持てたことに感謝しています。

 これからも、クライエントの安心と回復を支えるために、EMDRの可能性を丁寧に探っていきたいと思っています。
 
 あらためて感じたのは、実践を重ねる中でも、迷ったときこそ、基本に戻ることで支援の質が整っていくように思います。このニューズレターを読んでくださった皆さんにも、そんな「基本の力」を改めて思い出していただけたら嬉しいです。

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11.トレーニング参加印象記Weekend2再受講 
-Weekend2 再受講に参加して-

心理相談室 凛、マディヤーマ・メンタルクリニック川崎
加藤 久典(かとう ひさのり)

 この夏、Weekend2の再受講に参加した。自己紹介を兼ねてEMDRとの関わりについて述べると、Weekend1を受けたのは2014年だが当時は臨床の中で単回性のPTSDへ治療的に関わる機会が乏しかったこともあり全く用いない時期がしばらくあった。しかし発達性トラウマ・複雑性トラウマを抱えた方々への支援の必要性を痛感するようになり、他に様々なアプローチを学びながら何年もWeekend2を受講したいと思いつつ(気がついたら募集が既に終了していた年も数回あった)、ようやくそれが叶ったのが2023年である。そのため2年越しの再受講であり、私の中では前の受講の記憶も新たな状態での参加であった。

 しかし内容は2年前と比べ大きく変わった。手元のメモを見返してみると、2年前の初受講と遜色ない量が記載されている。マニュアルは改訂されてカラー表記となり、メーリングリストでも紹介されたように「解放して」といった表現の変更、そして何より第4のテーマ“繋がり”について。新たに追加されたものだけでも膨大である。

 追加点以外においても、先の学会継続研修でもフォーカスが当てられたEMDの重要性や、ソマティックな視点での見立て・関わり等についての説明が2年前よりもさらに細かく丁寧になったように感じられた。特にソマティックな視点はマニュアルに明記されたもの以外でも講義の随所に感じられた。発達性トラウマ・複雑性トラウマを抱えた方々へ対応していく際に極めて重要な点だと思うが、そういった方々への対応に追われる昨今、EMDRもそれに合わせて進化しているということだろう。

 会場には多くの受講生が参加されていた。再受講生はその4分の1程度だろうか。2023年の最初に受けた時はこの再受講生の人数ほどの受講生しかいなかったことを思うと、多くの方がEMDRへ期待しているのを感じた。

 残念ながら3日目は体調不良で参加できなかったものの、新しくなったWeekend2は2年前に受けたばかりの私にとって、単なる学び直し・復習に留まらないとても有意義で実りある時間だった。先の学会でもEMDRのトレーニングを受講したが実際に臨床の中で用いていない・用いることができないという会員が多いという話があがったかと思う。個々の事情はあるだろうが、トレーニングの再受講が以前に習ったことの単なる復習ではなく、今の臨床現場の実態により則したものであると感じられて、その知見を元に用いる機会が増えてクライアントの利益につながればと思う。

 再受講では実習がないため講義部分の受講のみとなった。今回はたまたま私の生活圏内の東京での対面受講だったので参加も容易だったが、地理的な事情も考慮するとオンラインでの再受講枠があればEMDRを学び直したいと考えているより多くの人に今の進化したEMDRが届けられるのではないだろうか。同様に、改訂したマニュアルに触れる機会も増えればと思う。送料などの問題はあるだろうが郵送などで購入できれば、進化した今のEMDRを理解する一助となるだろう。今のWeekend2はそれだけの価値があると思うので、多くの方に届いて欲しい。

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12.地方勉強会1: 第10回長崎トラウマ関連症状勉強会(NSG)(8/23)
-第10回長崎トラウマ関連症状勉強会(NSG)に参加して-

大分カウンセリングオフィスao
府内ハートフルクリニック
浦松 玉恵(うらまつ たまえ)

 2025年8月23日、新クリニックにて開催された第10回長崎トラウマ関連症状勉強会に参加いたしました。

 今回の勉強会では、2つの事例に対して、市井雅哉先生がコンサルテーションをなさるという内容でした。

 前年度に初めて参加させていただき、今回は2回目の参加となりました。私の住む地域ではEMDRを実践されている方が少なく、対面で学べる機会は非常に貴重です。

 私は数年前にWeekend 1を受講しましたが、前職を退職して以降、EMDRを実践する機会からは遠ざかっていました。心が折れそうな中で案内をいただき、学びを続ける契機となればと思い、参加を決意しました。

 勉強会では、経験豊富な先生方の事例を拝聴し、それに対して市井先生が鋭くも示唆に富んだご助言をされ、深い学びの機会となりました。

 最初の事例は、職場での傷つき体験により生活に支障をきたした女性のケースでした。成育歴に大きな問題は見られないにもかかわらず、トラウマ体験の影響が大きいことや、サポートの得られない職場に戻ることがクライエントにとって安全性につながるのかどうか、という矛盾を含んだ難しいケースでした。市井先生が指摘されたのは、RDIの活用でした。「今」に軸足を置いていると否定的な自己認知から抜け出すことが難しく、「過去」の機能していた自分に軸足を向けることが重要であるとされました。彼女は学生時代に運動部に所属しており、勇気や大胆さについて治療者が積極的に質問していくことで、否定的自己認知の文脈から離れ、肯定的な自己認知を想起することにつながるのではないかと感じました。

 二つ目の事例は、終結していた震災トラウマが身体的フラッシュバックの再発により、再度EMDRを希望された女性のケースでした。初回のEMDRでは数回の実施で「何も感じない」となり終結しましたが、十分にトラウマ記憶にアクセスできていなかった可能性がありました。一度目と二度目の反応の違いが大きく、前者は過小覚醒状態、後者は過覚醒状態にあったのではないかという意見も示されました。市井先生は、クライエントが「何に気になっているのか」という再度のアセスメントの必要性、また震災トラウマ全体を振り返り、何ができていて何ができていないのかを大きな文脈の中で整理することの重要性を助言されていました。さらに、面接室でクライエントに寝る姿勢になってもらった状態で処理を行うことも提案され、先生の臨床家としての柔軟な感覚に深く感銘を受けました。

 本勉強会を通じて、改めて準備(特にRDI)とアセスメントの重要性を学びました。初学者である私は、準備やアセスメントを早々に終え、ターゲット記憶を決めて両側性刺激(眼球運動)を行うことで、EMDRを実践しているつもりになっていたのかもしれません。トラウマ記憶を扱うことの責任と危険性についても、理解しているつもりになっていたのでしょう。EMDRという言葉には特有の魅力があり、どこか特別な技法であるかのように感じられます。しかし、本質的には心理療法であることに変わりはなく、クライエントの成育歴や病歴を丁寧に聴取し、準備とアセスメントを徹底し、現在の症状形成を推測する・・この基本的なプロセスを、今後はじっくりと丁寧に行っていきたいと強く感じました。

 最後になりましたが、このような貴重な学びの場を提供してくださった心療内科新クリニックの森貴俊先生をはじめ、スタッフの皆様、そしてトレーナーを務めてくださった市井雅哉先生に心より感謝申し上げます。

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13.地方勉強会2: 令和7年度第一回北信越EMDR勉強会(9/14)
-令和7年度第1回北信越EMDR勉強会(9/14)に参加して-

社会医療法人崇徳会 田宮病院 
小野田 明(おのだ あきら)

 北信越EMDR勉強会は2013年に発足し、現在日本EMDR学会理事である名和淳先生を中心に、しばらくは少人数ではありましたが、オンラインを用いた抄読会、年間1~2回の対面による事例コンサルや事例検討を継続して行ってきました。その立ち上げ及び継続において、日本EMDR学会認定コンサルタントの太田茂行先生にアドバイザー・顧問という立場を引き受けていただき、指導、助言、見守りを長い間いただいてまいりました。EMDRはもとより全ての心理療法に共通し、かつ必要条件である暖かい見守りをいつも提供していただき、太田先生には感謝につきません。

 始まりはSkypeを用いたオンライン勉強会でした。Skypeは不安定で何度か落ちてしまい、その度に入り直した記憶があります。その後まだ一般には普及していなかったZoomを太田先生から提案していただき、Zoom勉強会に移行し、その勉強会を無料で行うために、途中の45分で一回皆退席し、すぐにまた集まるという形式も今となっては懐かしい思い出となっています。そのZoomもコロナ禍を経て、いまや一般的なものになったことを思うと不思議な感じがします。

 北信越とは北陸(富山県、石川県、福井県)、信越(長野県、新潟県)を合わせた地域を指しますが、もともとEMDR治療者人口は少ない地区ではありました。しかし2024年に新潟県でEMDR Weekend1トレーニングが行われたことにより、次第に治療者人口も増えてきています。2025年秋にはWeekend2トレーニングも行われます。コロナ禍には勉強会は休会せざるを得なかったのですが、2025年9月14日に数年ぶりに勉強会が開催されました。

 内容としてはEMDRを用いたトラウマ治療事例のコンサルテーションでした。コンサルは太田茂行先生より行っていただきました。事例は3事例で、新潟県の先生2名、石川県の先生1名が提出されました。

 太田先生からはEMDRの基本的なところを丁寧に教えていただきました。より適切なターゲット選定の仕方、トラウマ処理に入る前のリソースワーク等の準備段階の大切さ、そしてそれは全ての心理療法において言えることだと思いますが、見立ての大切さなどを教えていただきました、

 神田橋條治先生は『治療のこころ 巻五』において「型」について柔道を例にあげ、このように述べています。「一人稽古によって型が完全に身についた状態、つまり何も考えず無意識に体が動くように身につけたあとで、現場つまり相手がいる世界に入ると、身についた技はいかようにも変形して、その状況に応じて使うことができる」と。「EMDRは8段階のプロセスをよく頭に入れておいて、今8段階のどこをやっているのか絶えず明確にしていく。まずはその基本をしっかりと身につけることが大事」と説明された太田先生の言葉が神田橋先生の型の話と非常に重なりました。基本を身につけずに、現場で成果をあげようとは無謀な話で、マニュアルを見なくてもすっと体が動くように刷り込むことによって応用が可能となると理解しました。次々と新しい技法が紹介されるトラウマセラピー業界で、それらの技法を学び、適宜組み合わせ、クライエントに合わせ用いることももちろん重要なことですが、まず自分が初めて学んだトラウマセラピー技法であるEMDRの基本に立ち返ることも、今の自分の臨床を安定化させるためには重要な作業になることを改めて考えさせられた体験となりました。

 講師を務めていただきました太田先生に心より感謝申し上げます。

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14.臨床家資格保持者に聞く
-臨床家のみなさまへ-

こころとからだクリニック福井
山本 維生(やまもと いお)

 私は精神科クリニックの心理師です。今回この文章を書くにあたり、雇用主でもある院長に、精神医療におけるEMDRの強みを聞いてみました。答えはとても端的に「EMDRでしか治らない人がいる」。“ガイドラインで推奨された治療はひと通りやるし、たいていのケースには適切に対応できる”タイプの支援者と一緒に仕事をしたとき、何度か同様の感想をいただいたことがあるな、と思い出しました。

 トラウマや愛着、解離の課題は、他のあらゆる精神疾患に併存し得ます。統合失調症、双極症、強迫症、発達症…などなどの内因や遺伝負因を持つ人が、トラウマできごとを経験する事態はいつでも起こり得るからです。この「併存」が「因果関係」のように(「すべての根本にトラウマがある」と)誤解されてしまうこともありますが、たとえば統合失調症の治療には薬物療法が、社交不安症の治療には行動療法が必要で、それらの疾患自体がEMDRで治ることはありません。しかしながら、「難治性の○○」といわれる一群の中に、トラウマの併存によって病状が重症化・長期化している人たちは一定数、確かにいます。

 私の担当する患者さんの多くは“他の診断基準を満たすと同時にトラウマも抱えている”方々で、PTSDやcPTSDの診断が確定しているのはむしろ少数派です。そのような方がEMDRで「魔法のように」すぐよくなるとき、そこに至るまでにそれ以外の必要な治療やケアを十分に受けてきたからだ、と私はいつも考えています。当院でほんとうの一から治療を始めるときは、まずEMDRで治る部分/治らない部分、トラウマが強く影響する部分/他の要因が大きい部分をできるだけ明確に判別し、ご本人とご家族、連携する医療者たちにそれを説明し、当事者も含む治療チーム内でだれがどの部分を担当するかを、各々の適性や相性に応じて割りふります。

 つまり、冒頭のことばは「トラウマを治せるのはEMDRだけ」という意味ではもちろんなく、EMDRと他の治療法やチーム医療とのなじみやすさ、汎用性の高さ、その稀少性に対する評価だと私は受けとりました。国公立の病院ですら経営が大赤字といったニュースを目にする昨今、保険制度が破綻しかけている医療も安泰とはほど遠く、国家資格化して5年以上経つけれど、医療領域での心理師の立ち位置もまだまだ恵まれているとはいえません。この厳しい状況を私たちが生き残っていく上で、EMDRはきっと強みになる。どんな技法にもいえることですが、「トレーニングや研修を受けた=治療ができる」ではない。だからこそEMDRを使いこなせることは、社会で働く人材としての私たちに付加価値を与えるかも知れないと思います。“トラウマを扱うのは侵襲的”と過度に恐れたり、“心理士が行なうのは支援であって治療ではない”と卑屈になったりするのを止めて、あなたもEMDRをしてみませんか。

 EMDRを実用する臨床家が増え、世代間連鎖の呪いをひとつでも多く断ち切って、世界の流れが少しだけいい方向に変わっていきますように。

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15.臨床家資格保持者に聞く
-「EMDRと私」-

医療法人錦病院
玉田 和子(たまだ かずこ)


 私は一般急性期を扱う消化器外科主体の地方の小さな病院に所属し、理事として経営や雇用管理などの仕事に携わる外、カウンセラーとして職員からの相談や、院長・理事長の依頼で患者さんの相談にも対応しています。保健・医療、産業、教育、司法領域と幅広い領域での臨床経験を積みましたが、どの現場でも構造的にEMDRを行うことがなかなか難しく、2009年より病院の片隅に「オフィスメンタルサポートいわくに」という自費部門の相談室を作り、直接外部からのご相談やEMDRのご紹介もお受けするようになりました。

 EMDRとの出会いは、広島でお世話になっていたメンタルクリニックのドクターが、いち早く興味を持たれたことに起因します。2000年、私は「学校危機への対処」という、スクールバイオレンスに対処する実習研修に参加する機会があり、シアトルでの子供のための教育プログラムと、家族療法のメッカ、パロアルトのMental Research Instituteでの研修を体験し、新しい刺激を受けた頃でした。

 2002年パート1、2004年パート2を受講し、その内容の新鮮さだけでなく、会場に集う先生方のさまざまなキャリア、主催者市井先生のお人柄、そしてなによりも菊池先生と大澤先生の通訳の素晴らしさとおしゃれでエレガントな様子に感銘を受けました。習いたてながら、ある事件の被害者からのご相談や、うつ病で職場復帰出来ない学校の先生に行うと、認知の編み込みがとてもよく効き、すぐに元気になるという経験をしました。以後2005年学会発足以来、毎年学会や研修会に参加し、新しい学びに自分のキャパが一杯になりながら、居心地の良さを感じ、いつもワクワクと楽しく過ごしています。学会のメーリングリストからも、たくさんの刺激を受けました。2011年の東日本大震災の折、メーリングリストを通じて、実にさまざまな災害支援、PTSD、トラウマ対応の最新の知見やスキルが、世界中から惜しげもなく提供される様子を目の当たりにし、そのつながりに興奮しながら、毎日リストに張り付いていたのを覚えています。現在もEMDRに集う仲間から、最新の知見や情報が沢山入って来くるので世界がどんどん広がっています。

 2017年に臨床家資格の認定を頂きました。臨床家資格は遠すぎて、分からないことだらけなので、少しでも上手に使えるようになりたい思いで関西勉強会にポツポツ通いました。次第に各地で盛んに勉強会が開催されるようになり、地元でも中国地区の勉強会を立ち上げることができ勉強の機会が増えました。そしてEMDRの認知度が高まるに従い、我が相談室にも問い合わせが入るようになり、ケースが増えて来ました。一生懸命にケースをこなし、まとめ、コンサルテーションを受けている時は、忙しいながら楽しく充実した時間でした。市井先生には「玉田さんは下手だね」と言われていましたが、無事臨床家資格を認定していただきました。現在は私の頃とは比べ物にならないほどハードルが上がっていますが、次のEMDRを担う世代の沢山の皆様には、是非資格を取得していただきたいと思います。自分の学んできたものは何であれ、EMDRの知識とスキルを身に付けようと努力すると、その柔軟な神経系の情報ネットワークが広がっていき、すでに持っている自分の情報やスキルとつながり、良い連鎖を生み出す力となり必ず役に立ちます。

 私の相談室は積極的に宣伝をしないままで、ケースも少ないのですが、EMDRは強い味方です。まだまだ地方にはEMDR臨床家がとても少なく、遠くから訪ねて来てくださいます。愛着障害や複雑性PTSD、陰に発達的な問題を抱えている方が多いです。

 これからも皆様とご一緒に、EMDRをクライエントさんに役立てていきたいと思っています。

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16.ファシリテーターに聞く
-ファシリテーターとなった経緯について-

JA長野厚生連 北信総合病院 
常田 修一(ときた しゅういち)

 2024年3月のW1トレーニングからファシリテーターとして参加している常田と申します。

 当時、EMDR Part 2を受講したのは2009年8月でした。受講した理由としては、EMDRを実施できたらよいのではと思った患者さんがいたのですが、今であれば、当時よりはましな対応ができるのだと思うのですが、当時の知識や技術ではEMDRをその方に用いることができず、その後職場が変わり、個人面接を行う機会も少なくなり、しばらく使わない期間がありました。

 その後職場が変わり、個人面接も行うようになり、EMDRを使う機会も出てきました。しかし用いてみるとうまく進まず、2013年頃から太田先生にコンサルテーションをお願いし、定期的にうけるようになりました。当時の記録を見てみると、手続きで勘違いしていた箇所があり、そこを修正してもらったことや認知の編み込みについて学んだことが多かったように思います。

 うまく進まない、進めたいのでコンサルを受けて少し進む、またうまく進まない、なんとかしたいのでコンサルを受けて少し進む、といった流れで定期的にコンサルテーションを受け続け、気づくと基準を満たしていたので2017年頃に臨床家資格を取得し(旧制度)、2018年10月からファシリテーター候補生トレーニングを受けることになりました(現在はコンサルタント資格を先に取得 する必要あり)。

 ファシリテーター候補生のトレーニングは3段階あるのですが、第1段階は指導担当ファシリテーターの陪席、第2段階は指導担当者の助言のもと候補生がメインで実習指導を実際に行い、第3段階は最終試験です。私が候補生のトレーニングを受けたことで良かったことは、陪席で実際のファシリテーションを目にすることができたことです。それぞれの先生方が、臨床で実際に行っていることの一端が見え、それを見ることができて自分の臨床の精度が上がったような気がします。ファシリテーターのトレーニングではあるのですが、自分がEMDRの実践を行う上でのトレーニングになっていたように思います。午前中の講義を聴くことができた事も大きかったです。2009年から比べるとテキストは分量も増え分かりやすくなっており、手続きを行う理由などの確認ができました。

 ファシリテーター候補生トレーニングを受け始めたのですが、しばらくすると新型コロナウイルス感染症のため、EMDRのW1とW2自体が一時中止となり、それに伴ってファシリテーター候補生トレーニングも一時中止となったり、オンラインへの対応があったりと、先行きが不透明な中でモチベーションの維持が難しいこともありました。

 トレーニングでは毎回定員を上回る数の申し込みがあり、多くの参加希望者をやむなくお断りしてしまっている状況です。ファシリテーターが増えますとトレーニングに参加できる人数も増えますので、是非とも、一人でも多くの方が資格取得を進めていただけましたらと思います。

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17.新理事就任のご挨拶

NPO法人サポートセンターゆめさき
沖縄県子ども若者みらい相談プラザ sorae(なは)
松本大進(まつもと だいしん)

 この度、新理事として就任することになりました。沖縄で臨床心理士として活動しております、松本と申します。国際交流委員としての役割を拝命しておりますところ、どのように会に貢献していけるか、理事会に参加して、学会の運営について勉強させていただきながら、できることを模索してければと思っております。

 先日の学会の継続研修では、講師のナタリア先生のアテンドを担当させていただき、懇親の席などでナタリア先生へご質問されたい会員の皆さまと、ナタリア先生を、拙い英語ではございましたが、繋げさせていただくなどさせていただきました。

 また、沖縄での心理職としての活動とともに、NPOの代表として経理面や財政面を含めて団体の運営もさせていただいております。学会としては、今後、法人として活動を進めていくところですが、これまでご尽力いただいていた理事の先生方への感謝を抱きつつ、沖縄での団体運営の経験を活かして、会のこれまでの会計の流れや、今後、法人として活動していくところでの予算や経費について、理事就任以降に参加させていただいた理事会で発言させていただいております。

 就任以降のご報告も兼ねてですが、理事就任のご挨拶をさせていただきます。

 会員の皆さま、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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18.トレーニング・資格認定委員に就任して

医療法人 心療内科 新クリニック    
森 ゆみ(もり ゆみ)

 この度トレーニング・資格認定委員を拝命しました、学会理事の森ゆみです。皆さまに馴染みがある部門に関わらせていただき大変光栄です。僭越ながら今回は、就任してからの約1年を振り返りながら、ご挨拶をさせていただきます。

 まずトレーニング部門についてです。通常トレーニングは、春、夏、秋の年3回を目途に行われますが、就任した年は、秋の2か月に3つのトレーニングが開催されるという年となりました。夏に就任してほどなく、それらの準備のために、「合宿免許」ならぬ、「合宿トレーニング委員会」といった勢いで、“習うより慣れろ”の本格業務スタートでした。とはいえ委員長の竹内先生やトレーナーの市井先生、優秀な事務局の方々など、温かい見守りと的確な導きの元でしたので、安心して問題なく進めることができたかと思います。

 実際のトレーニング会場では、ファシリテーターの先生方やアルバイトの方々、受講生の皆さまに、体を張ったご協力とご支援をいただいております。いつもありがとうございます。皆さまにこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 次に資格認定部門です。今期より、トレーニングの参加資格を審査する際の利便性を考慮し、2つの部門が合併いたしました。普段は、臨床家資格やコンサルタント資格などの、学会資格制度についてのお問い合わせが多いところです。こちらも秋に新規申請や更新の締め日の1つがあるため、「資格認定委員会キャンプ」といった様相での、矢継ぎ早スタートでした。現在、この原稿を書いている直近の締め日でも、新規の資格取得や資格更新に至った先生方がたくさんおられました。質の高いEMDRを提供できる仲間がおり、その数が日々増えていることを大変頼もしく感じます。皆さまの熱意や努力を無駄にしないよう、一貫性と整合性を保持しながら、柔軟な対応を心がけています。HPには資格取得の流れが記載してありますので、興味を持たれた皆さまはご覧になったうえで、是非ご挑戦ください。

 再び話をトレーニング部門に戻します。
 新しい試みについてご紹介いたしますと、ご存知のように2024年11月のW1トレーニングを機に、新テキストが運用開始となりましたため、再受講制度を整備・拡大いたしました。おかげさまで今のところ大変好評です。学会員専用のメーリングリストでは、随時受講のご案内をし、講義内容も一部ご紹介しております。EMDRへの興味・関心の高まりや、技法のブラッシュアップの機会にもなりますので、今後もご参加を前向きにご検討ください。

 ところで近年の課題と言えば、トレーニング部門だけの事案ではないのですが、特にW1トレーニングで、募集定員に対し予定をはるかに超える応募者があり、ご参加が叶わない方が多数出てしまうことです。会員の方々のご活躍を見聞きして興味を持たれた方も多いので、皆さまの日々のご健闘と成果を感じつつも、ご期待に沿うことができず申し訳なく思っております。ご迷惑をおかけし恐縮ですが、お近くに受講をご希望される先生方がおられましたら、繰り返し応募していただくようお伝えくださいますと助かります。

 「合宿トレーニング委員会」や「資格認定委員会キャンプ」で無事に合格点が取れたかは分かりかねますが、ある時事務局に「就任してまだ1年未満の若葉マーク」をアピールしたところ、ものすごく驚かれたことがありました。自覚はありませんが、意外と路上やキャンプ場で大きな顔をしているのかもしれません。これからも安全運転と快適なキャンプの精神で務めて参ります。

 以上、ご挨拶申し上げました。引き続き変わらぬご支援をいただけますと幸甚です。 今後ともよろしくお願いいたします。

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19.新理事就任の抱負

カウンセリングオフィスVISION  
名和 淳(なわ じゅん)

 こんにちは。2024年7月より、学会の新理事に就任いたしました、名和淳と申します。同じ新理事の久冨香苗先生と共に、広報委員を担当させていただきます。主な業務はニューズレター発行です。

 当学会の活動は、学術大会や継続研修のほか、EMDRトレーニング、資格認定など多岐に渡り、関連活動として、HAP活動、国際学会参加や地方勉強会などもございます。広報委員会は、このような学会活動、学会関連活動について、参加した方は振り返り、参加できなかった方、これからEMDRを学びたい方には、参加された会員の生の声をお届けし、学会の活動を知っていただくことを目的として、現在は活動しています。

 今年度はニューズレター作成マニュアルを作成し、目的を「経験年数の長い会員からトレーニングを受けたばかりの会員までの、さまざまな体験の共有を通して、EMDRへの理解の幅を広げ、研鑽中の会員やEMDRに興味をもちこれからトレーニングを受けようと考えている臨床家へ、幅広くEMDRとEMDRに関わる臨床家の率直な思いを知ってもらい、EMDRの学びへの動機づけを高める」としました。

 私は2002年にPart1トレーニングを受けましたが、当時はまだ学会はなく、EMDR network Japanという、学会の前身の組織でした。当時から比べると、エビデンスの高まりと共に格段にEMDRが知られるようになり、現在はトラウマに効果のある方法として、堅実な心理療法として根付いてきた印象があります。

 2002年当時は、EMDRは革新的な新しい心理療法として、まだまだ ”よくわからない心理療法” と見られていた時代だったと思います。しかしトレーニングや懇親会に参加した時、市井先生、本多先生、太田先生はじめ、先生方皆様がとてもフランクでかつ勉強熱心で、しかし発想が自由で豊かで、本当に魅力的な方達だと感じました。そんな団体に、地方から細々と参加してきた私が、まさか理事を拝命するなど想像もしていませんでしたが、EMDRの魅力に取り憑かれ、先生方に助けていただきながらEMDRに関わり続けてきたことが、このようなお仕事をさせていただくことに結びついたと考えると、感慨深いものがございます。

 さて、臨床でトラウマのクライエントに関わる中、解離のあるクライエントが増えてきていると感じますが(解離症状が認識され、セラピー対象として認識されることが増えた?)、EMDRは、フォーカスしたトラウマに非常に効果的だと感じます。解離のあるクライエントにEMDRを使うためにはある程度の工夫が必要ですが、EMDRが使えるようになった段階で、適切にEMDRを用いることで、確実にクライエントに良い変化をもたらすことができると感じています。

 トラウマに効果的な様々な心理療法が次々と生まれていますが、EMDRはトラウマ治療の要でありベースだと思っております。EMDRを理解し、マスターし、クライエントのために使えるようになる時、トラウマ記憶への関わり方がわかるようになり、トラウマセラピストとして成長して行くことができると思います。

 今後も、日本EMDR学会の発展に力を尽くし、皆様と共に成長していきたいと考えております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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20.新理事就任の抱負

医療法人 心療内科 新クリニック
久冨 香苗(ひさとみ かなえ)

 この度、新理事に就任いたしました、久冨香苗と申します。微力ではございますが、日本EMDR学会の今後のますますの発展のために尽力していきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今回、理事としては名和淳先生のもとで、広報委員の一員としてニューズレターの発行に関わらせていただいております。原稿のご依頼や編集を通して感じるのは、全国の先生方がそれぞれの場所で工夫を重ねながら熱心にEMDRに取り組まれているということです。前回のニューズレターでも、さまざまな先生方から原稿をお寄せいただき、先生方の文章から日々の真摯な取り組みや思いが伝わってきて胸が熱くなりました。

 私自身、これまで日々の臨床の中でEMDRを使ってまいりました。先生方の中には、毎日のように使っておられる方もいらっしゃれば、どう取り入れようか思い悩んでおられる先生方もいらっしゃると思います。そうした先生方にもニューズレターを読んでいただき、「自分もやってみよう!」と思えるきっかけになったら、うれしく思います。

 学会の活動がよりスムーズにそして活発に進み、会員の先生方が気軽に情報交換しながら励まし合えるような雰囲気づくりをしていくためのお手伝いができたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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21.お知らせ

(1)学会賞について
第4回 日本EMDR学会学術大会 研究発表優秀賞 該当者なし

(2)大会について
報告
日本EMDR学会第20回学術大会『「これまで」と「これから」』
日時 2025年7月19日(土)
場所 立命館大学 大阪いばらきキャンパス フューチャープラザ(B棟)

継続研修 摂食障害へのEMDR
日時 2025年7月20,21日(日・月祝)
講師 Natalia Seijo(スペイン、心理療法&トラウマセンター)
場所 立命館大学 大阪いばらきキャンパス フューチャープラザ(B棟)

予告
日本EMDR学会第21回学術大会
日時 2026年5月24日(日)
場所 中野(予定)

継続研修 AFTT-A (Attachment-Focused Trauma Treatment Therapy for Adults)
日時 2026年7月11,12日(土・日)
講師 Debra Wesselmann
場所 早稲田国際会議場

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22.トレーニングについて
報告
2025年 3月14日~16日神戸 Weekend1トレーニング開催 54名修了(再受講18名)
2025年 8月 8日~10日東京 Weekend2トレーニング開催 80名修了(再受講34名)
2025年 11月 7日~ 9日新潟 Weekend2トレーニング開催 24名修了
2025年 11月22日~24日東京 Weekend1トレーニング開催 44名修了(再受講19名)

予告
2026年 2月13日~15日神戸にてWeekend1トレーニング開催予定
(詳細はこちらをご確認ください)

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23.編集後記

 今年も皆様にニューズレターをお届けできることを嬉しく思います。前回の特大号に負けず劣らずボリューミーな量と内容になりました。原稿をお寄せいただいた先生方、大変ありがとうございました。どの原稿にも各々の先生方の想いがつまっております。多くの学会員の先生方に読んでいただけますように。(K.H.)

 

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