安全な電話会議の開催
EMDRのコンサルテーションにおいては、個人コンサルテーションであれ、グループコンサルテーションであれ、臨床事例の情報を話し合うので会話が外部に漏れ出ることがないように最新の注意を払う必要があります。
現時点で考えられる推奨される方法論について以下にまとめてみましたので、コンサルテーションが開催される場合に是非参考にしてください。
1対1の個人コンサルテーションの実施
1対1の個人コンサルテーションの場合は、互いに電話を掛け合う形が一般的だと思います。欠点は、電話代がかさむ可能性があるということです。
電話代を節約するために、無料通話を利用したいと考える人も多いでしょう。お薦めなのがOpen Whisper Systemsというところが出しているSignalというアプリを使うと極めて安全性の高い暗号化された通話ができますので、お薦めです。Android版とiOS版があります。PGPという暗号を発明したPhil Zimmermannが開発したZRTPという音声暗号化技術が使われていて今のところ解読できないようです。このページの最後にも書きましたが、携帯電話の安全性はそれほど高くはないようですので。
ちなみに「最も安全なメッセンジャーアプリ Signal がアメリカ上院議員間の連絡ツールとして公式に認可される」という報道が2017年5月にありました。Signalの優れた安全性を示すひとつのエピソードといえます。
Signalは通話機能だけではなく、暗号化メッセンジャー機能がありますので、日常の連絡にも優れています。臨床事例の情報のやりとりにはLINE、メール、Facebook Messengerなどを使うべきではありません。リスクが高すぎます。
他の選択肢としては、このページの下の方で紹介しているスマートフォンを利用したIP電話サービスですが、同じ会社のアプリを互いにインストールすると、通話料が無料になりますのでこの方法もお薦めです。通話は暗号化されてはいませんが、日本国内の会社の場合憲法及び電気通信事業法にて通信の秘密は法律上守られています。
無料通話で一番よく利用されているのはSkypeですが、米国の検閲対象になっているようで推奨できません(傍受の対象になっているのは米国の主なネットサービスの全てですが)。日本国憲法第21条第2項「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」、電気通信事業法第4条第1項で通信の秘密について「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」とされていますが、米国の会社にはこの法律は適用されませんし、そもそも憲法で定めている検閲の禁止や通信の秘密などの基本的人権が守られていないというレベルで問題があると言えます。LINEもよく利用されていますが、セキュリティがどれくらい保たれているのかは不明で、推奨できません。一応LINE株式会社は日本の憲法と法律に従うとはアナウンスされているようですが
3人以上で行われるコンサルテーションの実施
当学会では、トレーニングの一環として行われるグループベーシックコンサルテーションや、コンサルタントが任意に開催しているグループコンサルテーションなどの実施の場合には、bizspeakの有料電話会議を使ってもらえることになりました。費用は学会負担となります。以下の手順で利用してください。
1.学会事務局に申し込みをする
以下の項目を埋めてメールで事務局に申し込んでください。
- 申請者:
- 目的:
- 日付:
- 開始時間:
- 終了時間:
- 参加人数:
※ 参加人数とはコンサルタント自身も含めた会議に参加する全員の人数です
※ 開始・終了時間はコンサルテーションの実施時間を書いてください。事務局の方で、開始前10分、開始後20分の余裕をとる形で予約をいれますので。
2.事務局にて予約手続きが行われる
コンサルテーションなどの開始時間の10分前から、終了後20分後まで、前後30分の余裕をみて予約するようにしています。(申込の際には、実際にコンサルテーションが開かれる時間で申し込んでください)。
事務局の予約手続きが完了すると、予約完了のメールが事務局に届くのですが、そのメールが転送されてきます。そのメールには、予約日時、予約時間、利用回線数などの基本情報が書かれています。
主催者機能へのログインについてもかかれています。記載されているURLを開き、会議IDと暗証番号を入力して、主催者機能にログインしますと、電話会議に参加してきた方々の電話番号、開始時間、接続時間(単位は分)が表示されてきます。また、名前の欄は変更ができるので、参加者の名前に変更しておきますと見ても分かりやすいし、記録としても残りますので便利です。事前に参加者の電話番号を聞いておくと名前の変更には便利です。当日聞いてもいいでしょう「下4桁が1234の方はどなたですか?」とか。
参加者向けのアクセス案内も書かれているので、そこの部分をコピーして参加者にお知らせすると便利です。
3.当日電話会議を開催する
開始の5分ほど前に接続するといいでしょう。あとは、他の参加者が参加してこられるのを待つだけです。事前に、参加者の方々の電話番号を聞いておくと、参加されると番号がリアルタイムに表示されてくるので、参加してこられた方が誰なのかが番号からわかります。同時に、名前も書き込んでいくと便利です。
予定された終了時間の20分後までは使えるように余裕を見て予約はしてありますので、それをふまえてスムーズに終了してください。
また、ベーシック・コンサルテーション以外にも、以下に書かれているように個人が開催するグループコンサルテーションにも利用することができます。EMDRの普及支援目的で学会が費用を負担すると言うことです。また、理事会で利用したり、学術大会・継続研修会開催のための会議で利用したり、学会の委員会活動としての会議に利用したり、地方勉強会の電話会議による開催に利用したりできます。
承認される利用目的は以下のものです。
- グループベーシックコンサルテーション(学会トレーニング)
- コンサルタント主催の個人またはグループのコンサルテーション
- 学会の理事会・委員会活動としての会議
- 学術大会・継続研修会開催のための会議
- 地方勉強会の電話会議による開催
電話料金を安くするためのアドバイス
補足情報ですが、コンサルテーションを受ける際に、2時間の長時間にわたり電話をかける必要性があります。電話料金の目安と、スマートフォンを持っている人はIP電話アプリを使って安くする方法などを紹介したいと思います。
ひかり電話などのIP電話の方
家に光ファイバーを引いている人は、このプランに移行している人が多いと思います。全国一律3分8円なので、2時間通話すると320円かかります。比較的安価なので安心です。
昔ながらの電話回線の方
60kmを越える電話の場合、夜間だと2時間通話すると1,200円かかります。昼間だと1,600円かかります。少々高いですが、耐えられないほどの値段ではありません。勉強のためと思って受け入れるしかありません。60km以内に住まわれている方はもう少し安く電話できます。
スマートフォンをお持ちの方
通話料定額の方は何の問題もありませんが、一番高い20円/30秒という通話プランだったりすると、2時間通話すると4,800円かかります。ちょっと高すぎて、他の方法を模索したくなります。
iPhone、Androidなどのスマートフォンを利用されていればIP電話サービスのアプリを利用する手があります。
サービス名 | 月額基本料 | 2時間通話した際の料金 |
brastel 050 free | 0円 | 320円 |
050 plus | 300円 | 345円 |
LaLa Call | 100円 | 320円 |
brastel 050 freeはプリペイド方式でクレジットカードで500円から入金可能であることと、月額料金がないので、余分にお金がかからないので導入しやすいと言えます。ただ、電話をかける際に流れるアナウンスがうっとうしいのが唯一難点です。
ちなみに、こうしたIP電話のサービスは、同じ会社同士であれば通話料が無料になるという利点があります。なので、1対1のコンサルテーションの通話料金を節約する目的で利用するのも賢い方法です。
スマホではない昔からの携帯電話お持ちの方
通話料定額の方は何の問題もありませんが、一番高い20円/30秒という通話プランだったりすると、2時間(120分)通話すると4,800円かかります。ちょっと高すぎて、他の方法を模索したくなります。
G-Callというサービスを用いると、10円/30秒になりお得です。2時間通話すると2,400円になります。基本料金もありません。あるいは、これを機に通話料定額の導入を検討してみるのもよいと思います。ベーシックコンサルテーションが終われば、元の料金プランにもどすこともできるでしょう。
携帯電話は安全なのか?
情報の安全な伝達についての記事を書いているさなかに、カスペルスキー社のブログに「携帯電話ネットワークのハッキングは簡単か?」という記事が載っていました。また、2017年5月31日のニュースで「海外首脳に自分の携帯に電話させるトランプ氏、機密流出を恐れないのか」というニュースも流れましたが、記事の中にあるように「携帯電話は容易に傍受され、機密情報が流出してしまう恐れがある」というのが2017年現在の状況のようです。携帯電話を傍受するには多額の資金と高度な技術が必要で、例えば国家の諜報機関のような組織でないと難しいと思われますが、やがてコストが下がり技術が広まると犯罪集団にでも利用される可能性はあります。携帯電話は思われているほど安全ではないということが言えそうです。しかし、コンサルテーションを行う際に携帯電話を使わないでください…とまでもいいにくく、現状では携帯電話も一応OKとしてくしかないかなと思います。
携帯電話の通話はデジタル処理されたものが一定のプロトコルで電波として空中を飛び、電気信号としても送られているわけですが、通話そのものが暗号化されているわけではありません。なので、安全性には限界があるのかもしれません。このページの最初にも紹介したOpen Whisper systemsの出しているSignalというスマートフォンアプリは、その点ZRTPという暗号化で通話が保護されているので、普通に携帯電話で話をするよりは遙かにセキュリティの高い通話が可能です。なので、1対1のコンサルテーションではSignalを使うのがよいと思います。電話料金もかかりませんし。Signalはグループ通話に対応していないのが残念なところです。
グループ通話に対応していて、ZRTPによる暗号化で守られた方法もあるにはあります。Ostelという無料でSIPアカウントを発行してくれるサービスと、MacやWindowsで動作するJitsiというZRTPによる暗号化通話に対応したソフトを用いると、暗号化で守られたグループ通話ができます。実際に、学会の理事で試してみたのですが、5人くらいまでは問題なく動作するのですが、それ以上の人数では動作が不安定になり、例えば10人のグループコンサルテーションだと無理になってきます。今後も、安全なコンサルテーションの実現のために継続的に研究や調査を重ねながら、新たによい方法が見つかりましたら、情報提供をしていきたいと思っています。また、皆様からの情報提供も大歓迎ですので、よろしくお願いします。